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コンサルティングにあこがれて転職した会社では、顧客に心を開いてもらえない。 自分の進む道を見つけるために20人余りの人に話を聞きに回った。紹介で知った外資系保険会社の独立前提の外交員になった矢先、コンサルティング営業ができるというS.R.M.の求人を目にする。以前からあこがれていた仕事。すぐに面接を受け、将来は社内独立しても構わないという社長の言葉に魅かれて入社を決めた。結婚を間近に控えていた彼女も快く応援してくれた。家族のためにも最低限の生活費は稼がないといけないと初めて思った。S.R.M.は「保険業界の改革者になる」ことを基本理念に掲げ、顧客の立場に立った営業活動で躍進中の保険代理店である。 1年目は得意先の引き継ぎ中心で、社長は毎朝8時から1時間の指導をしてくれた。2年目からは損保を中心に本格的な営業をスタート。保険の更新業務の合間を縫って、顧客に紹介してもらった見込み客を大阪や奈良、明石まで訪ねた。 「顧客の利益が最優先」と信念を貫く社長。それまで商品を通じてしか顧客と会話してきておらず、顧客から本音やプライバシーを全く話してもらえない。新聞はもとより主婦向けの雑誌にまで目を通す。外部セミナーにも積極的に参加した。 歩合だと顧客に不利な保険を売ってしまうという会社の方針。給料は目標に応じた年棒制。しかし自分の決めた目標数字すら達成できない。その度に自分が会社に迷惑をかけていると1人思い詰めた。苦しくても誰にも言わないことが美徳だと思っていた。「コミュニケーション不足!」と上司に叱られても、「俺はやればできるんだ」と素直には聞けない。「7つの習慣」などの本に救いを求めても事態は好転しない。 自分の時間を削って、懸命になって指導してくれる人たち。自分が目指す道が見えてきた。 大手生保会社で最年少課長になった年上の代理店担当者に毎日のように相談すると、いつでも気軽に時間を取ってくれて、「大丈夫! 大丈夫!」と笑顔で言ってくれた。不思議と気持ちが楽になった。 何時間でも黙って話を聞いてくれる社長。だからお前はダメなんだとは決して言わず、どこが悪いのか、何が足りないのかを論理的に説明してくれて、最後には握手。「よし、頑張ろう」と気合いが入る。 「なぜこの人たちは、ここまで人のために懸命になれるんだ?」。そう言えば保険営業の世界で短期間で名を馳せた人はその後すぐに名前を聞かなくなる。逆に一流と言われる人は長年第一線で活躍している。「俺もこの2人のように、自分の時間を割いてでも人の役に立てる人間になりたい」と強く思った。 5年目になって生保主体の営業を任される。損保と違って更新のサイクルが長く、絶えず新規顧客の開拓をしないと売上が立たない。少しでも訪問先を増やそうと、契約に至らなかった顧客リストを見直すが、断られた明確な理由が記載されていない。「まずは直接聞くことから始めよう」。いつの間にか考えても解決できないと顧客先に足を運ぶようになっている。今また少しずつ実績が上がり始めた。 幼いころから多くの人から頼りにされる父を見て、その表面的なカッコよさだけにあこがれた。その思いが独立心を駆り立て、自ら動くことで目標とする人に巡り合えた。相手の立場に立ってコツコツと積み上げた信頼こそが財産。信頼されるからこそ多くの人が慕って集まってくる。 「5年後にはコンサルティング部門を立ち上げて企業内独立をしたいんです」。そのためには人間的な魅力をまだまだ磨きたい。「少しずつ子どもを作る自信ができてきました」と、充実した顔をほころばせた。 物語に関するご感想などをぜひお寄せください。 |
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