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資格を取得しても将来不安は拭えない。中高年になっても働ける資格を見つけた 先輩だらけの職場で、職人気質のシェフは何もわからない自分とまともに口を利いてくれない。「少しでも認めてもらいたい」と思って辞書片手に料理用語を必死で覚える。次長や課長と直接折衝をしたり、宴会予約や宿泊などの他部署と関わる機会も増えて、少しずつ黒服としての役割を覚えて行くと、半年後にようやく名前で呼んでもらった。 自分の力量が明確な形で認められる資格を取ろうと思い、出勤前や休日にコツコツと勉強して26歳でHRS2級に合格。鏡でバッジを付けた自分の姿を見ると自信が湧いた。しかし、棚卸しや販促を任されていたワイン担当として「次はソムリエだ」とはりきって教本を拡げても、フランス語と数字だらけで理解できない。諦め半分での受験でも、現実に不合格と知ると悔しくて仕方なかった。 「この1年は何だったんだろう。勉強からは少し距離を置こう」と思ったその矢先、同じホテルマンだった高校の友人が介護福祉士に転身した話を聞いて興味を抱く。折りしも、会社ではボーナスが減り、中高年の希望退職者を募り始めている。今は28歳と若くても、いつ自分にも同じ現実が降りかかるかわからない不安に襲われた。 「介護士なら歳をとっても頼りにされる仕事ができる」と、ヘルパー資格を目指す。しかし老人ホームで介護士が汚物の付いたおむつを交換する姿を自分に重ね合わせたとき、「僕にはできそうにもない。せっかく頑張ってきたこの仕事で生きて行こう」と腹を固めた。 念願のソムリエの称号。次は資格では通用しないリーダーシップを高めていく 翌年、フランス人シェフの招聘が決まって、ソムリエがいない店の中でワイン担当として資格取得を目指すように命じられた。「今度こそ絶対受かるぞ!」と、雑誌から切り取ったバッジの写真を机の上に置いて、銘柄、品種、土地、気候などをひたすら覚える日々。出勤前に3時間、休日には友人からの誘いも断って1日中勉強した。仕事後に残ったワインを飲み比べ、部屋に自腹で買ったボトルが並んだ6ヶ月後に晴れて合格。HRS1級も取得して3年前に憧れたバッジ輝く黒服姿が現実となった。 ところが、ワイン教室の開催を勧められても、引き受ける自信は生まれない。資格だけではない新たな力をつけていく必要性を痛感した。 30歳でサブリーダーにもなり、一人暮らしを始めて妻とも出会って充実する日々。結婚を機に、これからは自分を前面に出して次の段階を目指そう、と思った数ヶ月後の昨年7月に店の責任者に抜擢された。 資格ではない本物のリーダーシップを求められるが、売上のプレッシャーや会議、予算管理などの膨大な業務で、スタッフとの会話時間もなかなかとれない。苦手でも厳しく叱ることの大切さも痛感する。平日勤めの妻とは休みが合わず、一日1時間も会話ができない苛立ち…。 しかし、今また新しい壁を実感して、少しずつマネジメントスキルを高めていく。あせらずに目の前の業務に没頭すれば、資格はなくても新たな自信を獲得できることをもう学んできている。 我慢強い父を尊敬する一方で、明るい家庭を築こうと思っていた。憧れから足を踏み入れたホテルマンの世界で、壁や不満、不安を感じるたびに高い集中力でスキルを磨いてそれを乗り越えてきた。そのひたむきな姿勢が認められて、責任ある職務も任されてきた。 仕事が苦しくても温かい家庭が築ければいい。「ずっとチャーミーグリーンのCMのように仲良し夫婦でいたいんです」と照れながら語った。 物語に関するご感想などをぜひお寄せください。 |
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