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新しい上司のもと課は安定していく。俺はもう会社に必要とされていない? 入社5年目のころ、「管理部と言えども売上意識をもつことが企業として最優先」という意見の上司が新たに就任した。会社も売上数字に対する厳しい姿勢を見せ始める。誰もが会社の方針の転換にとまどう。しかしその上司の指導のもとで、部署の売上はどんどん伸びていった。 新しい受注が上がるたびに盛り上がる社内。上司の考え方に異論はない。しかし自分はこれまで「オーナーさんに愛され信頼されるコミュニケーションづくり」を部下に指導してきた。「自分たちがやってきた部内の組織体制や仕組みはぼぼ確立された。俺はもうこの会社に必要とされていないのではないか?」。大きな目標を失ってしまった。「どうしたの?最近目が死んでるで」。たまに会う学生時代の友人から言われた。 「もう会社を辞めて新しい仕事がしたい」。1年前に結婚していた妻に相談した。年上ながらも自分を信頼し、いつでも頼りにしてくれている。後ろ向きなことでも素直に打ち明けられる相手。「あなたがそう思うなら、辞めたらいいんちゃう!」そう明るく言ってくれた。妻との出会いから、大学へ入学したてのころのように少しずつ自分の気持ちに素直に振舞えるようになっていた。 休日を利用して転職活動をした。数社からはいい返事をもらえたが魅力を感じる経営者はいないし、待遇も変わらない。比較すると今の会社の良いところが見えてくる。自分についてきてくれた部下にも迷惑をかけたくない。決断はできなかった。 自分の気持ちに素直になって、「自分が活きる」仕事ができる部署に異動願いを出した。 悩み始めてから約1年後、会社で計画されていく新規事業が、人材不足のために実行が遅れていることを知る。「それなら俺がやってやる! 移動が認められないときは辞めるまでや!」と腹をくくって上司に異動願いを提出した。会社は希望をかなえてくれた。 マンションを月単位で賃貸するマンスリー事業と、長栄ホームのフランチャイズ化の仕事。直属の部下もなし。たった1人での船出。書店に毎日のように通い、参考になる書籍をかき集めては情報収集にあたる。実績をあげている他社のパンフレットをじっくりと検討しながらノウハウづくりに励んだ。社内のスタッフの協力をあおぎながら入居者募集のためのホームページも立ちあげた。 不安と期待感で気持ちがはり裂けそうになるなか、契約件数も少しずつではあるが増え始めた。オーナーや入居者からの問い合わせ、部屋の家具や家電の配置、募集条件や宣伝方法もすべて自分が考え判断しなければならない。思いついたことを行動に移さないと何も前には進まない。来年の9月までには京都市内で200室を確保したい。 できれば幹部にもなりたいし、高い給料も欲しい。しかしそれだけで頑張れるのではない。いつも温かく見守り励ましてくれる社長、管理部時代からの仕事によって生まれた新しい社外の人との出会い、アイデアがないかと聞き回れば快く提案してくれる同僚。上司との毎日の会話が確実に自分の力になっていく実感がある。わからないことや新しい知識を納得できるまで突き詰められる今の仕事は楽しくてしかたない。 今は、新しいことに嬉々として取り組んでいた父のように、自分の気持ちに素直になって行動できるようになっている。自分なりの「前向きに生きる意味」が見えてきた。自分自身も一児の父になっていた。 物語に関するご感想などをぜひお寄せください。 |
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