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偶然出会った造園職人への過酷な修業を乗り越えて
見つけた「自分の役割」。自分の会社設立に向けて、 10年間も世話になった親方に打ち明けられない日々。 |
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高校卒業後、目的なく働いた美容室を1年で辞めて、偶然出会った造園業に弟子入りする。毎日が過酷な肉体労働の連続だったが、仕事を任せてもらえるうれしさと手応えのなか夢中で8年間を過ごした。訓練校で出会った目的意識をもてない若手職人たち。自分の進むべき道を見つけて、世話になった親方への裏切り感と夢との葛藤に1年間悩み続ける。 小笠原 哲さん 29歳 京都市在住 [京都楓雅舎(北区) 造園職人] |
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流されるままに働き始めた美容室を辞めた翌日、偶然にも造園業に出会う。 テレビもあまり見ず、友だちと近所の山での基地作りや野犬狩り、サッカーの練習に明け暮れた小学生時代。強く勉強しろとも言われず、図工が好きで拾ってきた小石や瓦の破片を宝物のように机に飾っていた。 家が3軒もある裕福な家庭。大手企業の企画職だった父は、休日に自家用ヨットで遊んでくれたり、会社のカッコいいオフィスに連れて行ってくれた。 タバコの煙がこもる中学校では、ラグビー部の練習や夜遊びにふけり、制服もいじりまわす。スポーツ推薦で行ける高校を探しあててくれた先生は、実技試験に受かるように毎日つきっきりで指導してくれた。 女の子がいない高校は、力だけが支配する世界。出会いを求めて大阪までコンパにも出かける。3年生の秋からは親戚が経営していた美容室でアルバイトを始め、お客さんとの会話が楽しく、卒業後もそのまま正社員として就職した。 何の不満もないまま1年間を過ごしたが、「資格を取らないか」と言われて気持ちが冷めた。店を辞めた翌日、ふと自分の前を走っている造園会社の車を見て、「植木職人ってどうすればなれるんだ?」と思った。そのまま吸い寄せられるように跡をつけて尋ねると、職安に募集があることを教えられ、紹介された「京都楓雅舎」に面接に行く。 茶髪にピアス、細身の姿を見て、親方から「無理や、やめとけ」と断られても、「ヤル気あります」と何度もお願いすると雇ってもらえた。 過酷な肉体作業、ろくに休めなくても、毎日手応えを実感できて全く苦にならない。 お客さんの要望に応じて植木を切ったり、60kg近い石や植木を使って庭を造る仕事。「ここに穴を掘れ!」としか言わない親方とたった1人の弟子。何度も怒られながら、この作業は何のためにするものなのかを懸命に考えて取り組むと、少しずつ木の種類や大きさを見れば必要な穴の深さなどが分かってきた。 作業は早朝から日没まで続き、用事がない限り土日でも休みはなく、前が見ないほどのどしゃぶりの雨でも仕事に出かける。最初の1週間で手は握れないほどにまで腫れ上がり、腕がつって食事もままならない。 3m近い木から転落したり、蜂や毛虫に刺され全身の皮膚が変色して、汗が止まらなくなる。居眠り運転で2台のトラックをつぶした。 大きな組織で働く父や兄を見てうらやましくも感じたが、どんどん仕事を任せてもらえる充実感のなかで辞めたいとは思わない。親方と2人で稼いだお金でトラックが増え、資材置場が広がるたびに、「自分も貢献しているんだ!」とうれしかった。 3年目になってできた後輩は何度も同じ失敗をくり返す。指導していることを理解してくれないいらだちが募ってくる。 ある日、自分が同じように親方に怒られていたときを思い出す。親方は口数多く教えないことでヤル気を引き出してくれた。こちらの意思を押しつけるのではなく、その作業の必要性を考えさせながら指示することの大切さに気づく。 次のページヘ |
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